ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

広島の男

広島弁は俺のアイデンティティ
まずは、軽いジャブといきますか。

f:id:peraichikun:20180823232244j:plain


「オノさん、東京出身ですか?」
来た来た。初めて会う人から
まず聞かれるのがだいたい、出身地。
俺は広島。

広島県人というのは、広島という土地に
愛着を持っている人が多い気がする。
中四国のリーダーはわしらじゃ!
みたいな、妙なプライドも持っている。

まず、話のネタには困らない。
広島と言えば、修学旅行でよく使われる
世界遺産原爆ドーム、宮島。
スポーツならカープサンフレッチェ
食べ物なら、牡蠣、お好み焼き。
そして、暴走族、ヤクザ。

しかし、何といっても広島弁だ。
広島出身と言うと、
広島弁しゃべってみてくださいよ~」
とよく言われる。
でも、そこからドンドン話を広げられる。
つまり、広島出身はということは、
自らのアイデンティティを保つうえで
かなりのアドバンテージで、自分の特徴を
印象づけるのに一役買っているのだ。

まぁ、まずは軽いジャブといきますか。
10年以上こっちに住んでるから、
バリバリの広島弁とはいかないが、
少し思い出せばすぐに出てくる。

俺は、わざと広島弁を混ぜながら
澄ました顔で答える。
「ん? 俺? 俺は、広島じゃけぇ」
「あ、そうなんですかぁ~」

あれ・・・?

f:id:peraichikun:20180823232252j:plain

なんだか予想した反応と少し違う。
もっとこう、
「え~! 広島弁っていいですよね~」
とかいうノリで来ると思ったのに。

もしかして、“じゃけぇ”っていう語尾が
聞こえなかったのかな? 
いかん、いかん。最初が肝心。
俺は、さらに広島弁をゴリ押ししていく。

「そうなんよ~。ええじゃろ?」
「あ~、そうですね~」

あれ・・・?
おかしいな、全然食いついてこない・・・。

すると、なにやらホールの方で
大学生たちが盛り上がっている。

「あはははは! マルオ君おもしろーい!!」
「嘘じゃろ~、ワシがそんなにおかしいん?」

”ワシ”? ・・・え、広島弁
しかも、一人称が、“ワシ”だと?
自分のことを“ワシ”と言えるのは、
菅原文太山本浩二くらいにしか
許されていない、広島弁の高等技術。

俺なんて、一度も使ったことがない。
「ワシは、ワシよ!
 広島の男は、みんなそう言うんよ!」
いやいや・・・。

どうやらマルオという奴は、俺より一週間前に
採用された広島出身の大学生らしい。
しかも、生粋の広島弁
どーりで、俺の広島トークが盛り上がらないわけだ。
きっと数日前に入ったマルオが、
もう既に広島トークを散々披露したのだろう。
くそぉ、マルオ。
俺のアイデンティティを奪いやがって。
許せん・・・。

f:id:peraichikun:20180823232259j:plain
「あ、そういえば、
 もう一人広島の人が入ってきたらしいよ~」
「え~、ホンマにぃ? どこにおるん?」

マルオと大学生たちが
キッチンにぞろぞろと入ってきた。

「あ! いた! オノさーーーん!
 オノさんも広島なんだって!」
「俺・・・? あ、いや、ワ、ワシ?
 う、うん、ワシも広島よ」

俺は、一度も使ったことのない“ワシ”を
この時初めて使ったのだった・・・。