ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

ハイテンション男 ヒロセ

 

「オハヨーーー!!」
後ろから急にやたらとデカい声がした。
振り返ると、
大学生ほど若くはない20代半ばくらいの男が
満面の笑みで立っている。
髪は坊ちゃん刈りで、よく見ると顔には
所々ニキビの痕が残っている。

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「俺ヒロセ!!! ヨロシュウ!!」
男は、そう言うと同時に、
ものすごい勢いで右手を差し出してくる。
「あぁ、はじめまして」
痛っ! 
俺の右手を、ヒロセは物凄い力で握りしめてくる。

「ねぇ、いつからなん?」
「え?」
「うん、せやからいつから?」

いきなりタメ口・・・。
いつから?って、
ここに入って何日かってことか・・・。
確か一週間くらい、かな・・・。

「う~んと、いっしゅ・・・」
「あーーー! 今、俺の『せやから』に
 反応したやろ?! 俺、京都やから!
 ヨロシク! はははは!」
「へぇ~そうなんだ~」

・・・こいつ。うざい。
人の話にかぶせてくるし
全然話聞く気ない・・・。

「あれ? ジブンあの人に似てるやん?!」
「え?」
「あの! あのーーー! あのバラエティ出てるやつ!」
「いや~誰だろ」
「あー! なんやっけ! 
 もうそこまで出かけてんねんけど・・・
 分っかんねぇ! あはは!」

なんなんだ、このハイテンション男は・・・。

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「俺なぁ!役者やってんねん!」

え、おまえも役者か・・・。
俺も数年前までそんなこと言ってたな・・・。

どうやらヒロセは、役者を始めたばかりらしく、
知り合いの劇団で頑張っているらしい。
どーりで、無駄に腹から声出してるわ・・・。

そこへ店長が割って入ってくる。
「ちょっとヒロセくん、この人、一応年上だよ?」
一応って・・・。
「え? そなんやー。まぁええやん」
ヒロセは、店長の肩をポンポン叩いている。
こいつ、店長にもタメ口なのか・・・。

「おれが、この世で一番要らないと思うもん、
 それが敬語! 
 だってそれだけで壁できるやん! なぁ?」
「うん、まぁ・・・」
「だからタメ口! それが俺のスタイル!
 ええやろ?」
「あぁ・・・いいんじゃない」
おいおい、店長も怒んないのかよ。

「そういえば、オノ君も役者やってたんだよね?
 ヒロセ~、事務所とか紹介してもらいなよ~」
「え? いや・・・」
「え! ホンマに?!」

すると、ヒロセは俺に向かって
いきなり直角にお辞儀をしだす。
「オノさん! これは失礼しました!
 宜しくお願い致します!!!」

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おいおい。お前のスタイルはどうした。
思いっきり敬語になってるし・・・。
しかも、そんなかしこまられても、
俺に紹介できるコネクションなんてあるわけない。
俺なんか、結局どこの事務所にも入らず、
何もかも中途半端で終わったんだから。

「いや、俺にそんなコネクション・・・」
「事務所紹介してください!!
 お願いします!!」
うわー・・・、全然聞いてねぇー。

その後、ヒロセと顔を会わせるたびに、
しつこく頼まれるハメになってしまった。