ぺらいち君のイマイチ人生

~東京ドームから徒歩5分~

ぺらいち君のイマイチ人生~東京ドームから徒歩5分~

プロ野球選手のサイン

 

「やばいやばい!」

ホールの大学生バイトの
カサハラが、興奮した様子で
キッチンに入ってきた。

カサハラは、ホールで何かあれば、
すぐにキッチンに知らせに来る。
キッチンのバイトは、なかなか
ホールに出る機会がないため、
カサハラの情報は貴重だ。

「どうしたの?」
「いや、元巨人のS選手が来てる!
 かっこいい~~」
「まじ?!」

少し前に引退した元巨人S選手は、
カープファンの俺でも知っている、
球界ではそこそこ有名な選手だ。

「ほんとですか?いいなぁ~」

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それを横で聞いていたトミーが、
急にソワソワし出す。
トミーは、野球経験者で
昔からの巨人ファンらしく、
いつになく興奮しているようだ。

カサハラは、S選手に
サインをもらいたい一心で、
色紙の代わりになるものと
ペンを探している。

「ねぇ、ちょっと誰か
 ペン持ってない?」
「オレ、持ってますよ」

トミーは、胸ポケットからペンを
取り出し、カサハラに渡す。

「よし、これでサインもらってくる!」
「え!?じゃぁ、俺のもサイン
 もらってきてもらえませんか!?」
「オッケー!」
「やった!ありがとうございます!」

カサハラは、駆け足で
キッチンを出ていった。
待っている間、トミーは
しみじみと漏らす。

「S選手・・・小さい頃から
 憧れてたなぁ・・・」

野球経験者だからこその思いが
あるのかもしれない。
しばらくして、カサハラが色紙を
2枚持って興奮気味に戻ってきた。

「もらってきたよ!サイン!!
 はい、これ」
「うわー!ホントですか!
 ありがとうございます!」

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満面の笑みでサインを受け取った
トミーが、なぜか固まっている。
サイン色紙を覗いてみると、
そこにはS選手のサインの右側に、
サインよりも大きな字で
「カサハラくんへ」と書かれていた。

 


「これ・・・・・・」

 

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S選手がカサハラの名札を見て、
気を利かせて2枚ともに
書いてくれたのだろうか・・・。

トミーは、喜びとも
悲しみともいえない表情で、
静かにサインを見つめていた。